・シンギングボウル発祥の国とは
・現代のシンギングボウルが生まれた背景
・日本におけるシンギングボウルと国際シンギングボウル協会
・シンギングボウルは仏教などの宗教と関係がありますか?
・現在、シンギングボウルはどこの国で作られていますか?
シンギングボウル発祥の国とは
シンギングボウルの起源や発祥については諸説ありますが、一般的にはヒマラヤ地域(チベット、インド、ネパール、ブータンなど)において、古くから金属製の器として宗教的な儀式や供え物に使用されてきたものと考えられています。しかし、そうした地域においても、物や水などを入れる器として以外に、音を出すためのツールとして用いられていたという明確な記録が存在しておらず、はっきりとしたことはわかっていません。
一方、日本には「おりん」などの仏具が存在しますが、これらは仏教儀式の一部として独自に発展してきており、シンギングボウルとは異なるものと考えられます。「おりん」は、仏教の法具として使用され、主に葬儀や読経、仏壇での死者や祖先の供養の際に鳴らされますが、シンギングボウルは音とその倍音の響きを通じて、生きている人の心身の調和とリラクゼーションなどに使用されるためです。
現代のシンギングボウルが生まれた背景
現代のシンギングボウル・メソッドに見られるような、音や響きを瞑想や癒しの道具として用いるという使用法は、比較的新しいものと考えられます。音や響きによるヒーリングツールとしてのシンギングボウルの発祥は、20世紀後半の欧米で起きた「ニューエイジ」ムーブメント以降と考えるのが良さそうです。
ニューエイジとは、自己意識や精神性についての価値を再発見し、重視しようとする考えですが、シンギングボウルも、そうした流れの中で、瞑想、内観、ヒーリングなどをサポートするツールとして注目されました。現代のシンギングボウルやそれを用いたメソッドは、チベット、インド、ネパールなどを訪れた欧米人が、現地の文化とニューエイジ思想の両方に触発されたことで生まれたと考えられます。
こうした理由で、欧米やチベット、インド、ネパールなどにおけるシンギングボウルを用いたメソッドには、ニューエイジの流れをくむスピリチュアリズム、神秘思想、代替療法などの考え方が含まれています。また、文化人類学、考古学、宗教学、民族音楽など様々な面での研究では、チベット、インド、ネパールなどにおいて、シンギングボウルが古代から存在したことを示す根拠は見つかっていません。シンギングボウルは、ニューエイジ思想と現地の文化が融合して1970〜1980年ごろに生まれ、現代のチベット、インド、ネパールにおいても、それ以降に欧米から「逆輸入」されたものではないかと考えています。
日本におけるシンギングボウルと国際シンギングボウル協会
日本においても2000年代初頭までは、海外(欧米、インド、ネパールなど)のメソッドをそのまま輸入したものが主流でした。日本のシンギングボウル普及団体の先駆けとして2009年に発足した国際シンギングボウル協会においても、当初は日本での情報がほとんどなかったことから、海外のメソッドを中心に紹介していました。
その後、日本での講座の開催も1000回を超え、受講者数も4000人を超えるようになりました。現在、日本のおけるシンギングボウルは、欧米やインド、ネパールから輸入された一部の人々のためのツールではなく、より幅広い層の人に癒しと安らぎ、気づきを与えてくれる存在になってきたのです。
「本当の自分を知り、自分らしく生きるにはどうすべきか」「混迷の中でも、幸せに生きるにはどうしたらいいか」といった課題は、ますます強くなってきています。国際シンギングボウル協会は、これまでの歴史や経緯に敬意を払いながら、日本の文化・風土や実情にあったシンギングボウルの使い方、日常生活への取り入れ方などを研究・開発し、普及することを目指しています。
シンギングボウルは仏教などの宗教と関係がありますか?
シンギングボウルは、チベット仏教の法具とも言われてきましたが、現在のチベット仏教の儀式などにおいて、シンギングボウルが正式な法具として使用されることはありません。また、日本の仏具である「おりん」などと形状が類似していますが、「おりん」はシンギングボウルとは異なる役割を持ち、仏教儀式の一部として独自に発展したことがわかっています。
こうした理由により、シンギングボウルは音を使ったリラクゼーションや瞑想の道具として、仏教などの宗教との直接な関係はなく、異なる文化的背景と用途を持っていると考えられます。シンギングボウルとチベット文化との関係についての詳細は、国際シンギングボウル協会が編集した書籍『シンギングボウル入門』でも説明しています。ご興味がある方は、ぜひそちらをご参照ください。
現在、シンギングボウルはどこの国で作られていますか?
現在、シンギングボウルは、インド、ネパール、チベット(チベット自治区)などのヒマラヤ周辺地域以外に、チベット自治区以外の中国、タイ、トルコなどでも製造されているようです。
インド、ネパール、チベットでは、もともとチベット仏教の法具であるティンシャやベル・ドルジェや、美術品・工芸品などの金属加工を専門に行う職人集団が存在していました。1970年ごろからのバックパッカーブームで、インド、ネパールを訪れる欧米人が激増したため、お土産品やヒーリングツールとしてシンギングボウルの需要も拡大し、インドやネパールでの製造体制が確立しました。
最近は、中国での癒しブームによって、中国国内向けや中国から海外へのネット販売が急増しており、中国国内でも製造されるようになったようです。主に鋳造(ちゅうぞう)製シンギングボウルが大量生産され、格安な価格で出回るようになりました。音や品質にこだわらなければ、モールなどでは1000円台のシンギングボウルも販売されているようです。